エピソード35『熊に弾着?のつもりが??』

 これは割と最近のお話なんですが、京都でヤクザ物ビデオシネマを撮影していた時のお話です。
「実録・・・」を謳い文句にしたそのシリーズは、メッタやたらと銃撃戦や抗争シーンが多い作品でした。でも、その割に『車で敵の事務所に横付けして、5〜6発発砲して逃げる』と云った様なカッコ悪いシーンばっかりで、「実際のヤクザの抗争なんて、こんなもんなんだね・・・」と思っていました(何せ「実録」ですから)。
 そんな作品撮影も後半に入った頃、助監督3人にこの抗争シーンをワンシーンづつ撮らせてやろうと言う話が持ち上がりました(実は監督が飽きて来たんだ・・・と言う話も有りましたが)。
 まあ、それ自体は新人養成にも良い事なんで大賛成だったんですが、ヤツ等(助監督たち)はリキが入っちゃって、こだわった(面倒臭い)演出を考えてくることになります・・・。
 深夜、定宿にしているホテルに電話が掛かって来ました。それは明日の監督代理(?)を仰せつかった、助監督からでした。
 翌日のシーンは、博多の繁華街にある駐車場で、車から降りて来たヤクザの幹部が撃ち殺されると言うモノでした。

助「あの!熊に弾着できます?」
と「熊に?繁華街の駐車場に熊が出るんか?」
助「いえ!あの熊のヌイグルミなんですけど?」
と「ヤクザの幹部がヌイグルミ持っとるんかい??」
助「ですからそのヤクザに子供が居てですね、そのお土産という態(この場合「くま」と読まず「てい」と読んで下さい、京都の映画の業界用語で「〜と言う事で」と言う様な意味です)で、一緒にケーキの箱も持っているんです」

 なるほど面白い演出です。手に持ったヌイグルミから綿屑がほとばしるなんて良いじゃあありませんか!
快く了解して翌日現場に行ってみると、僕が思っていたよりずっと大きいヌイグルミが待っていました。でもそのヌイグルミは熊ではなくて、コアラだったんです。