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このお話は、正確に言えば活動屋のエピソードじゃあ有りません。ボクの友人(と言うより師匠格かな)のMさんと言う浅草の桶屋の職人さんのお話です。
「桶屋」と表現しましたが、Mさんの作る檜の風呂桶は芸術品と言われる位素晴らしい物でした。最近ではその檜の工作技術を活かして、江戸の建物のミニチュアを作って評判になっていました。雑誌等にも取り上げられ、ちょっとした下町の文化人みたいになった頃のお話です。
ある日、Mさんから慌てた声で電話が掛かって来ました。「一大事が起きたんだけどさ、ちょっと来てくれねえか?」と言う物です、取り敢えず駆け付けました。着くなりMさんが封筒を取り出して来ます。白い大振りなその封筒には映画等で見慣れたアメリカ合衆国の白頭鷲のマークが入っていました。
差出人は麻布のアメリカ合衆国大使館でした。なるほどこれは一大事です。中を拝見すると「この度本国から文科担当のミセスなんとかさんと言う人が赴任するので、その歓迎レセプションに御招待したい」と言う様な内容の招待状でした。(たしか全文英語だったと思います)
「どうしたら良いかな?」「取り敢えず聞いてみます」と、アメリカ大使館に電話すると担当者が出てくれて「間違い無く御招待しました、ぜひお越し下さい」との事。「あの〜そちらのパーティですと婦人同伴ですよね?」「勿論です!」との事、さ〜大変な事になった。「ものは試し、御招待を受けたのだから、行ったら良いじゃあないですか、うしろを見せるのは江戸っ子の名折れですよ」と言ったら、「そうだな、こういう時って幾らくらい(御祝儀を)包むモノかねえ?」「いや〜要らないんじゃアないですか?」「そうか?一升瓶の2〜3本も抱えて行きゃあ良いか!」と手ぶらじゃあ行き辛いのが江戸っ子らしい。
結局御得意の檜のミニチュアの角樽をポケットに忍ばせて行って好評を得たそうです。江戸っ子ってのも面倒なんですね。 |
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