エピソード25『線路を走るキャデラック』

 活動屋は自分達の使う機材や道具にハイカラなネーミングを付けるのが得意です。ガムテープの事を「ガバチョ」と言うのは、一般の方も使っているので分かりやすいんですが、業界の中だけでしか通用しないスラングも一杯有りますし、ある撮影所だけでしか通用しない隠語もあります。
 ボクが良く仕事をする京都映画では「プヨ!」と言う言葉があります。「それいらないよ!」とか「どけて!」とか言う意味なんですが、ある時「なんでプヨ!って言うの?」と聞いてみた所、以前、中国の撮影スタッフと仕事をした時にむこうの連中が使っていたと言うんです。「ああじゃあ『不要(プ〜ヤオ)』なんだ、それが『プヨ』に聞こえたんですね」判ってみればたいした話じゃありません。
 撮影現場で良く見掛けるカメラを横に移動するために、レールを敷いて使う移動車の事を、ある撮影所では『キャデラック』と言っていました。キャデラックとはアメリカ製の高級乗用車の事ですが、なかなかオシャレなネーミングです。ある日、カメラマンがサードの助監督に「おい、キャデラック借りて来いよ!」と命令しました。助監督はキャデラックは車の名前だからと言う事で車両部に行きました。
「すみませ〜んキャデラックありますか?」「そんな物急に言ったって有る訳無いぞ、誰が借りて来いって言ったんだ?」「カメラマンです」「なんだそれなら特機(特殊機材)に行きな!」「あ、はい?」と言う訳で、特機倉庫に行きました「すみませ〜んキャデラック貸してください!」「おう!レールは何本いるんだ?」「え?キャデラックってレールの上も走れるんですか??」と聞いた助監督さんは、その後日本映画を代表する名監督になったそ〜です。
 ホントにそんな事件が有ったかど〜かは甚だ疑問ですが、いわゆる英雄伝説みたいな事で、映画関係者の間で語り伝えられている有名な伝説(?)の一つです。