エピソード22『塩っぱい雨?』

 「ムービーマジック」と言うアメリカの映画の色々なテクニックを紹介した番組を観ていたら、人工雨を降らす方法を紹介していました。パイプを大きな藤棚の様に井桁に組んで、高圧のホースで水を送って雨を降らすのだと言うのです。
 「この機材を使うとわずか8時間でセッティングが完了するんだ!」と自慢そうにインタビューに答えていました。会社名も「ナントカ・レインカンパニー」とか言っていたのでたぶん雨降らし専門の会社なんでしょうけど、日本じゃあぜった〜い仕事は無いと思いますよ。
 日本では雨降らしは「繰演」と言うパートの仕事なんですが、ベテランの操演さんなら消防用のホースのノズルの部分を指の先で押さえて霧雨からドシャ降りまで自由に作っちゃいます。セッティングの時間も15分も有れば充分でしょう。日本のスタッフをバカにしちゃあいけません!ようは画面の中の勝負なんですから。
 大林宣彦監督の「あした」と言う作品をやった時のお話です。映画の冒頭、植木等さん演ずるやくざの親分の命を狙う鉄砲玉の運転するトラックと衝突しそうになって、自転車で突っ込むうどん屋の役を頂きました(?)。「監督、この衝突しかけるシーンはスタントマンがやるんですよね?」と伺ったら「じゃあ君は何処に出るの?」と聞き返されてしまって、「ま!良いか!?」と自分でやる事にしました。
 撮影当日、現場は瀬戸内海に浮かぶ因島のメインストリート「アイハブ通り」です(と言っても誰も通らない道ですが)。用意された自転車は牛乳配達に使う様な重い実用車で、地元の消防署からボランティアで来てくれた消防車3台から、黒澤映画ばりに思いっきり降る雨の中撮影は始まりました。でも、普通の水だと思って雨に突っ込んだら、実は海水で(確かに海辺の道ですから一番近くにある水は海水ですよね)。目は見えないし塩っぱいし、ホント死ぬかと思いました。