エピソード19『演技に悩んで投身自殺?』

 大林宣彦監督の「野ゆき山ゆき海辺ゆき」と言う作品に出演させてもらった時のお話です。
 劇中で竹馬に乗るシーンが有りました。監督からの注文は、お話の主人公である少年達が憧れるほど上手に竹馬を乗りこなして欲しいと言うものでした。
 「竹馬乗れます?」「25年位前にはネ!」「大丈夫ですか?」「ア・・・たぶんネ?」とか言うやり取りが助監督さんと有って、取り敢えず自主稽古をすると言う事で竹馬を借りて帰りました。
 その頃はマンションの6階に住んでまして、そのマンションの6階の廊下で竹馬の稽古をしていますと、(たぶんコトコトと足音が聞こえたんでしょう)隣の部屋の玄関が少し開いて、その部屋の奥さんがソーッと覗いたんですね。その時のボクの頭はカッパヘヤーでしたから、さぞかし不審な人物に見えたでしょうね。仕方が無いので屋上で稽古することにしました。一応、屋上には物干場が有って、屋上に出るドアはロックされているんですが、マンションの住人にはそのドアのカギが渡されていました。
 夕方まで稽古を続けていたら、昔のカンも戻って来て、片足でケンケンも出来るようになりました。調子に乗ってやっていたら、竹馬の片方の足が、屋上に有る排水口の金属の蓋を踏み抜いてしまいました。たぶんその金属の蓋が錆びて脆くなっていたんでしょう、ズポ〜!!と言う感じで入ってしまって、ボクは屋上に投げ出されてしまいました。
 気が付くと屋上の縁まであと1メートル位で、そこには低い手すりはある物の、竹馬に乗れば身長も2メートル50センチ位は有ったでしょうから、文字どうり一歩間違えれば地上へ真っ逆さまでした。竹馬も具合良く揃えた様に並んで居ました。
 もしかしたら翌日の新聞の三面記事に「無名の俳優、竹馬の演技と自分の将来性に悩み投身自殺?」と書かれていたかもしれません。