エピソード14『湯布院映画祭のポスター』

 大分県湯布院は有名な温泉地なのですが、毎年夏の終わりに開催される湯布院映画祭でも全国の映画ファンに知られています。21世紀が始まって最初の湯布院映画祭のポスターを依頼されました。それまで映画祭の主導権を握っていたメンバーが引退(隠居と言うべきかな)して、若いメンバーが仕切るようになって最初の映画祭です。快く引き受けました。
 映画祭のメンバーから渡されたテーマは「20世紀の日本映画」と言う漠然としたものでした。さて何を描くべきか?安請け合いを後悔し始めた時、一つのアイデアが閃きました。20世紀を代表する日本映画なら、やはり黒澤明監督でしょう、世界で言うならルーカスとスピルバーグです。この2人の代表作は「スターウォーズ」ですよね。スターウォーズ第1作のファーストシーンを思い出して下さい、荒涼とした砂漠をロボットのC3−POとR2−D2が口喧嘩をしながら歩いて来る場面でしたが、このシーンじつは2人が師と仰ぐ黒澤監督の「隠し砦の三悪人」のオープニングで千秋実さんと藤原鎌足さんが喧嘩をしながら歩いて来るシーンのパクリ(と言うよりオマージュ)なんです。これは映画ファンには有名な話なのでこれをパロディにして、千秋実さんと藤原鎌足さんのイラストの影がスターウォーズのロボットになっている絵を描きました。
 しかし、一枚では何なので「ボツネタ」としてもう一枚、上山草人と言う、誰も知らないだろう俳優さんの姿を描きました。この人は無声映画時代のハリウッドで活躍した初の日本人俳優なんですが、黒澤監督の「七人の侍」で、わずか3カットしか写っていない琵琶法師の役を遺作に亡くなった方です。よほどの映画マニアで無ければ知らないこの琵琶法師の姿を描いた絵の方が何故か採用になり、映画祭の期間中湯布院の街を飾りました。
 この絵を選んだ湯布院の映画マニアはやはりハンパじゃあ有りませんでしたね。