エピソード13『ソロモンさんとの接近遭遇』

 ボクが直に会ったソロモンさんは、もう大部屋俳優を定年でお辞めになって、スタジオ管理と言う、撮影所のお世話をする(学校の用務員さんみたいな)仕事をしていて、それでも時々老人の役が来ると、嬉しそうに出演していらっしゃいました。
 大林宣彦監督の「おかしな二人」と言う作品の準備中のお話です。田舎の老親分のとても良い役が有って、そのキャスティングがなかなか決まりませんでした。ふと「ソロモンさんなんてイメージなんですがねえ」と言ったら、「そうか、ソロモンね!どーしてる彼?」「さっきあっちのセットにいましたけど」「チョット呼んで来てよ」と言われ、自転車で(東宝撮影所は広いんです)セットに駆け付けました。すると、ソロモンさんは気持ち良さそうにセットの表のパイプ椅子でうたた寝をしてます。「ソロさん、仕事!仕事!良い役だよ!」と知らせたところ、「うん?あ・・・」と『大丈夫かこの爺さん?』と思う位ぼや〜っとしていました。でも、翌日の衣装合わせにはGパンに赤いバンダナ姿で颯爽と現われたのには、その場にいた一同「役者じゃの〜!」と感心する事。
 撮影は全編大林監督の故郷の尾道で行われました。ソロモンさんの現地付き人を志願したボクがソロモンさんと相部屋でいると、早朝にフト目が醒めました。隣のベッドで寝ているソロモンさんがうなされているんです。「あれ!」と思って振り向くと、なんとベッドの上で台詞の稽古をしていらっしゃいました。「若い衆、起しちゃったかい?スマンな、久しぶり(の仕事?)なんで目が冴えちゃってなあ」とおっしゃいます。そのまんま寝てもいられないので起き上がって台詞の稽古のお相手をしました。
 最近物故されたと言う話を聞きました。いまはスクリーンの隅っこの方で時々御元気な頃のお姿を拝見しています。