エピソード10『騒がしい雪』

 ボクと同世代の監督達が助監督から監督として一本立ちし始めた頃のお話です。
 監督として1〜2本は調子良くお仕事が有るのですが、その後が大変です。丁度その頃は第一次カラオケブームだったので、カラオケのバックに流れる映像のお仕事をアルバイトに撮っている監督が結構居ました。
 確か『緋牡丹博徒』か何かのバックの映像だったと思います。昔風の木造の橋の上で、一見緋牡丹のお竜さんみたいな(?)お姉さんが居て、あたりに細雪が降り始め、その中に独り佇むると言う絵を撮りたいと言うのです。
 ロケ場所を見つけるのが一苦労でした。監督のイメージする昔風の橋の適当な物がなかなか見つかりません。色々探したところ、都内の公園の池に掛かる橋が選ばれました。次は降らす雪をどうするかと言う問題でしたが、当時の常識では雪のシーンは発泡スチロールを細かく砕いた物を撒いていました。それでも良かったんですけど、後片付けの事を考えると、池の水面に落ちた発泡スチロールの屑をどうするのか?と言う問題が有ります。網か何かで拾い集めていたんでは大変な作業です。色々考えた結果「麩」を削って撒く事にしました。「麩」なら拾い損なった物でも2〜3日で土になるでしょうし、水面に落ちれば融けてくれる筈でした。
 撮影当日はナイター撮影の1発勝負。風の吹かなくなるのを待って本番となりました。監督の「スタート!」の声でカメラが廻り始め、監督からの「キュー」で雪が降り始めます。とても良い感じで降って行きました。しかし、ホット一安心したころで、池の水面が騒がしくなりました。『バチャバチャ!』とまるで橋の下で10人くらいがバタ足をしている様な音が聞こえます。何故なら、時ならぬ大量の餌に池の鯉が大喜びし始めたのです。
 監督の「笑うな!笑うとNGだぞ!」と言う声に、みんな笑いたいのを必死に堪えた3分間(3コーラス分)でした。